ククリア学園 With all those bare-legged mermaids around tempting me-1-
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ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

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With all those bare-legged mermaids around tempting me-1-

 
 七月の半ば。期末考査直前の週末。
 マクシムとモンブランは、屋内プールにいた。中央駅から更に列車を乗り継いで五駅。アストルニ学園からもイスカルナ女学院からも離れた、ラル区にある複合施設だ。スポーツジムや小さ目ではあるが遊戯設備もあるそこは、郊外の有名な娯楽スポットである。
 そもそもの事の発端は、セリーナがマクシムに言い放った一言だ。
「いつも制服着替えたり気を遣ってるけど、それなら絶対制服を脱ぐ場所で遊べばいいんじゃない?」
 外出の際、制服着用を義務付けられている学園と女学院。その上男女交際厳禁となれば、会うのも気を遣う。どうにか今までも制服問題をクリアして触れ合ってはきた。それでもなかなかに苦労しているのは確かであり――そんな中での思い付きである。
 季節は夏。暑くなってきた。泳ぐという行為が相応しい季節。ならばプールはどうか。プールならば行き帰りは制服でも、必ず脱ぐことになる。そうなれば制服と言う鎧の縛りがなくなるのだ。
 更に時期。期末考査直前となれば“普通ならば”遊びになど行こうとは思わない。バッタリと学園、女学院関係者に出くわすというリスクも少なる――そこまで考えての発言である。
 そして更にセリーナは言った。
「サー・モンブラン・ビーニャスも連れてきてね。アイネズも連れてくるから」
 にこやかに、何でもないことのように言われた発言に、マクシムは顔には出さず、考え込んだ。
 モンブランは、スポーツはなんでも得手で、体を動かすことも好きなので否とは言わないだろう。しかし、アイネズ・フレデリックとプールと言うものがまるで結びつかなかった。
「今回は、あたしがアイネズ連れて行くって話していいから。そうしたら絶対来てくれるでしょ」
 間違いなくそうだろうと思う。アイネズ・フレデリックが来るというのならば、モンブランが来ないはずがない。
 そうして、今に至るわけなのだが。
「――俺は正直半信半疑なんだが……」
「彼女の事を、よく知っているはずの貴方がそういうなら、そうなんだろう――というか僕も疑ってる」
「アイネズとプール……まるで結びつかない」
「僕も最初に聞いた時、まさにそう思った。でもセリーナさんは絶対に連れてくると言っていた。それを信じるしかない」
「まあ……レディー・ギローに弱いからな……アイネズは……」
 プール内の更衣室前。そこが待ち合わせの場所だ。時間は午前十時。もうあと五分ほどである。
 開館からさほど間もないということもあり、更衣室から出てくる人は多い。その波を見ながら二人を待つ。やがて、見覚えのある柑橘色の頭が見えて――二人は息を呑んだ。
「あ、マクシムくん!」
 こちらに気付いて手を振ってくるセリーナは当然水着を着ている。ビキニタイプの白い水着。ミントグリーンのパレオを巻いている。首元と手首に同じ色の布が巻かれていてアクセントになっている。
 惜しみなく晒された白い肌。細い腰のライン。すんなりと伸びる柔らかな曲線を描いた手足。そして何より、形の良さが際立つ豊かな胸。
 目の毒とはこのことだとマクシムは思う。何しろ隣に立つモンブランも、感嘆の息を漏らしたくらいだ。
 いつまでも見ていたくなる見事な肢体だが、理性を総動員しないと色々と抵抗できなくなるような気がする。
「お待たせ、マクシムくん。それにサー・モンブラン・ビーニャス、お久しぶりですね」
「ッ……はい。ファルケ美術館でお会いして以来ですね。お久しぶりです。お元気そうで何よりです」
 セリーナはにこやかに挨拶をしながら、マクシムの様子に頓着せず目の前に立った。小首を傾げて見上げてくる。
「どうしたの? なんかぼーっとしてる」
「――いや、そんなことは。それより……後ろにいらっしゃるのは」
 彼女の背後にチラつく金色。背中に何とかして隠れるようにしている。セリーナは苦笑いをすると、素早く振り返った。
「ほら……アイネズ。いい加減に観念しなさい」
「っ……あ、あたしは、だから嫌だって……」
「もうここまで来てしまったんだし、今更よ。いつまでも、あたしの後ろにくっついてるわけにもいかないでしょう? ほら――」
「――!!」
 強引に前に押し出される、アイネズ・フレデリック。恥ずかしいのかうつむいて、顔を見せようとしない。身に着けているのはこちらは清楚なワンピースタイプの水着。交流会の日のドレスに似た、柔らかなピンク色。腰回りに斜めにフリルがあしらわれ、裾まで続いている。
 すっきりとした線の手足といい、細身の腰と言い、全体的にたおやかな印象を与えてくる。
 セリーナとは対照的な姿ではあるが、こちらも目を惹かれるほどに美しい。
 マクシムは横目でさりげなく隣のモンブランを見る。彼の耳は少し赤くなっていた。
「サー・モンブラン・ビーニャス」
 セリーナの呼びかけに、モンブランは弾かれたように我に返った。
「――はい、なんでしょう」
「泳ぎはお得意ですか?」
 にこやかにされた問いに、モンブランは瞬きする。
「泳ぎ――ですか。まあ、それなりには」
「何を控えめなことを。水泳選手顔負けに出来るじゃないか」
「いや……そこまででも」
「ふふふ。そうなんですね。でも、それなら安心ですわ」
「――安心?」
 楽しげな笑顔でセリーナは、また自分の背後に隠れようとしているアイネズ・フレデリックをモンブランの目の前に押し出した。
「ちょ……セ、セリーナ……!」
「サー・モンブラン・ビーニャスは泳ぎがお得意だそうだから、安心して自分を預けたらいいわ、アイネズ。交流会の日のように支えて頂いたらいいのよ」
「な……だ、だから、あたしは、い」
「嫌だって言っても、もうこうして水着を着て出てきてるのよ? せっかく制服のことを気にせず一緒にいられるのだから、この機会にしっかりサー・モンブラン・ビーニャスに甘えたらいいのよ」
 甘えるという言葉に、モンブランが体を硬くしたことにマクシムは気づく。普段と同じ無表情だが、眼鏡の奥の瞳が落ち着かなげに動いていた。
 アイネズ・フレデリックは顔どころか体をほのかに赤くしている。うつむかせていた顔を少し上向かせて、伺うようにモンブランを見上げた。モンブランは“表面上は”いつも通りその視線を受け止めている。内心の動揺はおそらく計り知れないことが、マクシムには長い付き合いでよくわかった。
 セリーナは二人の様子に満足そうに頷くと、マクシムを見返る。
「マクシムくんは、あたしと二人で……良いわよね?」
「――あ、ああ。それはもちろん。けれど、別行動?」
「とりあえずは、ね。だって、今日は制服やらの煩わしさを気にせずにデートしたくてここに来たんだもの。そうしたい……かな」
 後ろ手に、恥ずかしそうに身を少しよじらせる様に、眩暈を覚える。普段もそうした仕草をすることがあるが、今の姿でされてはたまらない。狙ってしているなら性質が悪いし、そうでないとしたら無防備すぎる。
 自分の中に湧き上がるものを抑えるように、誤魔化すように咳払いを一つ。
「――そうだね。僕もそうしたい。では、とりあえずは昼までは別行動……かな」
「うん。それでいいんじゃないかな。お昼は皆で、あっちにあるレストランで食べたらいいかなって」
「では、十二時にあそこの時計の下辺りで集合、かな――モンブラン、それでいいかい?」
 モンブランはまた体を震わせて我に返る。
「あ……ああ。わかった。それで、構わない――アイネズは……」
 見下ろした先のアイネズ・フレデリックは黙ってただ頷いた。いつの間にかモンブランの側に寄っている。セリーナの後ろに隠れることを諦めて、その次に安心できる場所に行くことにしたのかもしれない。
「では、サー・モンブラン・ビーニャス、アイネズをよろしくお願いしますね――アイネズ、また後で」
 セリーナはいつも通りの優雅な一礼をすると、マクシムの腕に腕を絡めてくる。肌に直に当たる感触を意識しないように努める。
「行きましょう、マクシムくん」
 向けられる笑顔も、何故だか普段よりも更に艶やかに見えて、マクシムはこっそりと唾を呑んだ。


 



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illustrate by るか



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