ククリア学園 甘い世界へのチケット

ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

甘い世界へのチケット

 
 事務的な白封筒でクリスピンの元に一通の手紙が届いた。
 差出人は特に書いておらず、裏面の隅になんとも形容し難い生物的な…混沌から生み出された何かと例えた方が 説明しやすいくらいの不明な多分恐らく…ひょっとしたら生物?が描かれていた。

 『封筒の隅にいむいむのイラスト書いてたら私からの手紙ですからね! ちゃんと読んでくださいね!』

 先日、このように別れ際に金髪の小さな乙女は言っていたような気がした。
 だとすればこの禍々しい生命体は『いむ』なのだろう。
 昔から大人気のキャラクターで男子でもちょっとした小物なら持っていたりするくらいのものをここまで謎の生き物にかける才能にクリスピンは感心した。

 『先日は有意義な時間をありがとうございました。お陰様で…』

 交流会後も彼らは時々会っていた。
 もっとも、クリスピンから彼女を誘うことはないのだが。
 主に図書館や商店街を少し奥に入ったところにあるカフェなど、人の少ないところや一緒にいて不審に思われにくい場所で近況を話し合ったり、泣きつかれて勉強を見たりしていた。
 町中で飛びついて周囲の視線を集中させたことを彼女なりに反省しての場所選択なのだろう。

 手紙の内容は先日の図書館でクリスピンにテスト対策を手伝ってもらったおかげでそれなりの成績が取れたので強制補習は免れた事が書いていた。

 「…ん?」
 3通目の便箋だけが別に折られて封筒に入っている。
 よく見れば便箋ではなくコピー用紙で、来月末まで有効のケーキバイキングの予約券が挟まれていた。
 招待券ではなく、あくまで「予約する権利」のあるチケットだ。

 『お友達と楽しんでください! すごく美味しいんですよ! 特に……』

 手紙以上に細かく書かれるケーキの説明と彼女が好きだと書いているタルトと思わしき絵を二度見する。
 赤紫色の何かが何かに乗っているのはわかるのだが、やはり悲惨な生命体にしか見えないのである。
 あいつの親って芸術関係の仕事していたよな… とクリスピンはイラストから目をそらし、手紙を封筒に戻し引き出しにしまう。
 「友達と行けって野郎どうしではしゃいでどうすんだよ。痛いどころか哀れだろ…」
 口には出さないが甘いものが好きな男は案外いる。
 クリスピンも決して嫌いではないが乙女達程も甘いものに耐性があるわけではなかった。
 「…とはいえ、予約券を手に入れるだけでも一苦労だしな。フライダ・フェイ・ホテルだし… フイにするのは勿体無い」
 男数人でケーキを囲む姿を想像し、思わず頭を抱える。これが乙女達ならば賑やかな一時なのだろうけど。

 結局、何度考えても女性が多そうな店内で数人の野郎がケーキをつついている姿を想像すると精神に来るものを感じたので、送り主を誘うことに決めたのであった。



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