ククリア学園 図書館での出会い
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ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

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図書館での出会い

 
 土曜日。午前で授業も終わり昼食をとった後は自由時間である。
 中等部に進学すると同時に高等部を卒業するまで生徒は特に事情がない限り寮生活となる。
 親元を離れてのルームメイトとの生活にも慣れたので休日は余裕があった。
 私は外出許可をもらい、校外にある図書館にやってきた。
 毎朝読むための小説を借りようと思ったのだ。
 校内の図書館で探したものの、全4巻の2巻目だけが借りられているという憂き目にあったのだ。
 しかも目星をつけていた2作品すべて…


 「…届かない…」
 図書館内の検索端末で探し当てた小説は手の届かないところに置かれていた。
 付近に足場にできそうな台もなく、椅子を台にするようなことはとてもではないができない。
 この制服を身にまとっている限りはしたない真似はできない。
 そっと飛び跳ねてみるが届くわけもない。
 仕方ない… 職員を呼ぼうと思った時目の前に目的の本が差し出された。

 「え…?」
 「なんか必死になっていたから。これで合ってる?」
 私の代わりに本を取ってくれたのは頭二つ分は背の高い男の子…? 人だった。
 こちらも制服を着ている。年に数回交流のあるこちらに負けずとも劣らないお坊ちゃまが通う学校の制服だ。
 私の通っている学校の男子版というところだ。
 「ありがとうございます。助かりました」
 深々と頭を下げる。
 親切な人に遭遇して助かったが、初等部の四年生くらいしかない身の丈は本当に恨みがましい。
 まだ成長の余地はあるのだろうか…
 「難しい本を読むんだな」
 男の人が私が読みたかった本を見て感心したようにつぶやく。
 「朝の読書時間用の本なんです」
 「ああなるほど。イスカルナのお嬢さんともなると初等部からそんな複雑な物を読むのか…すごいな」
 「…私、中等部の生徒です。この前まで確かに初等部でしたけど。ほら、中・高等部の制服でしょ?」
 「え… あ… ああ確かに…」
 「あの、ついでで悪いんですけど…」
 「ん?」
 「もう一冊…取ってもらえたら嬉しいです…」

 私は本を借りた帰りに、利用者アンケートに「高いところの本を取りやすいように踏み台を設置してほしい」と要望を書き投書箱に投函しておいた。
 外出許可をもらう際に申請した時間は一時半から四時半… まだ二時間も時間がある。
 申請した時間以内に戻ってくれば特にお咎めはないし、特に制限はされていない。
 初等部の頃こそ服装、言葉遣い、行動の取り方を厳しくされてきたが中等部に進学した瞬間あれこれと厳しい制限が無くなったのだ。門限以外。
 つまり善悪の判断を自分でつけろということだ。
 この制服をまとって右手に漫画、左手に食べ物を持って歩くようなことは禁止されていないけどもできるわけがない。
 物を食べながら歩くということを一度はやってみたいものだが…

 「あ、いた」
 聞き覚えのある声に反応して振り返ると先ほど本を取ってくれた人がいた。
 「お前結構抜けてるな… カード忘れて行ってたぞ」
 「ああっ…」
 本を借りられたことに満足して貸出の際に必要なカードを回収するのを忘れたようだ。
 カード自体は連絡先もデータがあるので学校か自宅に届くだろう。それをわざわざ持ってきてくれたのだ。
 なにか礼くらいしなくては失礼ではないか?
 「重ね重ね申し訳ありません…せめて何かお礼を…」
 「気にしないでいいよ。俺もそろそろ帰ろうかと思っていたところだ」
 「では、まだ戻られるまで時間ありますか? 私こんなにあっさり目的の本が見つかると思わなくて夕方まで外出の許可を頂いたんです。もったいないのでもう少しゆっくり外出を楽しもうと思って」
 「じゃあ… そこでお茶でも飲んで一息つくか」
 指差されたのは図書館内にある喫茶店。騒がしい町中の店よりは落ち着けそうだ。
 「お礼にごちそうしますね」
 「いや、さすがに小学生に奢らせるのは…」
 「中学生です!!」
 二度も小学生扱いをされてしまった。私も数年たてば背も伸びるかもしれないのに。
 「そういえば、親切にしていただいたのにお名前を聞いていませんでした… 私はエトワール。エトワール・バトワイザーと言います。今日は何度も親切にしていただきありがとうございました」
 「俺はクリスピン・ファニーニだ。高等部の一年生だ」

 その後はとりとめのない会話で盛り上がり、結局女でしかも中学生に奢らせるのは色々と心証が悪いと言われ、私がいただいた紅茶とケーキの代金はあちら持ちになってしまった。
 結局お礼は出来ずじまいだったけど、楽しかったと言ってもらえすこし安心した。
 連絡先を交換したので、寮に戻ってから改めてお礼をしようと思う。
 もしかしたら交流行事の時とかにまた会えるかもしれない。いや、会うために彼を探してみるのもいいかもしれない。
 私は無事に借りることが出来た本を帰りの電車の中で読みながら数十分前の出来事を思い出す。
 しかし、肝心の文章は頭に入らず…思い出すのは彼との一時間に満たないやりとりのことばかりであった。



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