ククリア学園 交流会その後
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ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

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交流会その後

 
都心から少し離れた場所にあるダロス美術館
そこには様々な企画で使われるスペースがあり、有名な写真家の作品で壁一面を飾る事もあれば子供達の作品が並ぶこともある

今回のテーマは『若き才能』

アマチュア芸術家や学生の作品が数点置かれている
若い作者が多いせいかその家族で賑わっていた館内も昼時には人の波が引きはじめた


その作者の中の一人、ハリー・ロサレスは気だるげに壁にもたれ行きかう人々を眺めていた
公の場の為か、いつもは窮屈で着崩しがちの制服を今日はきっちりと模範的に着ている
しかしただでさえ目立つアストルニ学園の制服、それに似つかわしくない態度のせいでひそひそといくらか周囲の話題に上がっていたことに本人は気付いていない



欠伸を一つして少し涙が滲んだハリーの目が一点でふと止まった

会場の出入り口にそわそわと落ち着かない様子の少女が一人
腰辺りまである長い黒髪は簡単に忘れられるものではなく、自分と同様に目立つ彼女の制服はイスカルナ女学院の物

ハリーが今回の作品展のチケットを送った少女だ

どうやら彼女はこちらに気付いていないらしい

ハリーはすっと壁から離れ、気配を消して彼女の後ろに立つ



「わっ!」

「ひっ!?」



突然の事に少女は思わず飛び出しそうになった大きな声を抑える為、慌てて両手を口にあてる
美術館で大声を出してはいけないという咄嗟の判断だ
悪戯が成功した少年のようにニヤニヤと笑うハリーを少女、アサヒ・ヨシムラはキッと睨みつけた


「ちょっと、何すんのよ」

「挙動不審だったから声かけてやったんだろ」

「普通に来なさいよ普通に!」

「おもしろかっただろ?」


悪びれる様子が全くないハリーにアサヒは次々と文句をぶつける
しかしやはり場所を考えてかボリュームは抑えていて、初対面の時ほどの勢いはない


そんな彼女の言葉はハリーの耳を左から右へと抜けていく
そして視線は彼女に向けたまま、思考は別の所へ



『どうして自分は彼女に興味をもったのか』



ハリーは興味のあるものとないものに対しての差が激しい

交流会で彼女と関わり、作品を見てもらいたいと思った

しかしそれがなぜなのか、ハリーの中でいまだに解決していないままだ

確かに突けば倍ほどの反応が返ってくるのはおもしろいが・・・



「・・・ちょっと、聞いてんの?」

「あ?わりぃ、聞いてなかった」

「っこの・・・!」


右手を握りしめ、それを振りかぶるのを必死で抑えているアサヒを置いてハリーはスタスタと歩き出す


「案内してやる。こっちから回るぞ」

「偉そうに…!」



ふてくされながらも置いて行かれるのは不安なのか、アサヒは少し距離をとりつつも隣に並ぶ


作品を見ていくうちに最初は喧嘩ごしだった会話が自然になり、色がきれいだとか形がおもしろいだとか子供のような感想を言うアサヒにハリーがちゃちゃを入れつつ会場を回る
アサヒの作品への反応はとても素直で、好みの作品の前を通るときは歩調がゆっくりになり、逆の場合はそのまま通りすぎる


そんなアサヒの歩みがある作品の前でピタリと止まる


視線の先には一体の『天使』の彫刻

作者名は『ハリー・ロサレス』

一枚一枚に細やかな細工が施されている羽は見ている者が瞬きをしている間にはばたくのではと思えるほどで、憂いを帯びた表情は何かを語りかけているようだった

アサヒは大きな目をくりくりと開き、両手をガラスケースに添え夢中で天使を見つめていた
頬をうっすらと桃色に染めた彼女はどこか幼い少女のようで、それは今日で会うのが三度目のハリーにとって初めてみる顔だった

そんな顔をさせているのが自分の作品だという事がどこか照れくさく、ハリーは誤魔化すように痒くもない頬をかきながら横目でアサヒの様子をうかがった


「な、なによ!?」


するとその視線に気づいたのかアサヒは慌てて平静を装うかのように表情を戻しハリーに向き直る



その反応がおもしろく、先ほどまでの照れくささが消えたハリーはからかうように口角を上げる



「・・・惚れた?」

「ば・・・っ!!」




みるみる内に桃色から朱色に変わる頬

これは交流会でも見たことのある顔



「ばっかじゃないの!?」



余程動揺しているのかさっきまであれほど静かにしようと努めていた事をすっかり忘れてしまったかのような大きな声
両手は落ち着きなく無駄な動きをしている



そんなアサヒの姿にハリーの中で浮かんだ言葉




『かわいい』




無意識の言葉にハッとする




『かわいい』?


そうか
俺、こいつの事『かわいい』と思ってんのか





ハリーの中でアサヒに出会ってから引っかかっていた疑問がすっと取れる
それはわかってしまえば簡単なことで


どうして自分の作品を見てもらいたかったのか
なぜ交流会が終わってからも繋がりを持っていたかったのか



自分のなかで滅多にないそわそわとした感情に思わず笑みが零れる



そうとなれば話は早い



ハリーは早速、ぎゃーぎゃーと精一杯怒っている事を伝えるアサヒにどうやって次の約束を取り付けようかと考えを巡らせるのだった



「ちょっと!聞いてんの!?」

「あ?聞いてなかった」
 



ha_fy.jpg

illustrate by 藤村ゆみ



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