ククリア学園 交流会二日目

ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

交流会二日目

 
交流会二日目

アサヒは今日もまたベンチに座っていた


ただ昨日と違うところは、空腹どころかご馳走を食べているという事と

最初からハリー・ロサレスが隣にいるという事だ




アサヒはハリーにブローチを見せると約束したものの、この大人数の中であえるのだろうか、と疑問に思っていた

しかしそんな心配は全く必要なかった

交流会が開始してすぐにクラウディアがすいすいと人波を抜けて、恋人のヒルベルトの元にたどり着いたのだ

その隣にいたハリーと無事に会うことができたのだが、どうしてヒルベルトの場所がわかったのかという問いにクラウディアはにこにこと笑うだけで答えてはくれなかった


その後、すぐにブローチを見ようと胸元に顔を近づけるハリーと一悶着あったものの、ベンチに座ってじっくりと見る、という結論に落ち着いた

髪飾りの時と同じように目をきらきらさせながら真剣にブローチを見るハリーの隣で、アサヒは昨日食べ損ねたご馳走が並ぶテーブルとベンチを行ったり来たりしていた

本当においしい料理ばかりで、昨日食べ損ねた事が悔やまれる



しばらくすると、ハリーは満足したのか礼と一緒にブローチをアサヒに返し、自分も料理を持ってベンチに帰ってきた

そして二人で並んで食事をすることになったのだ



機嫌良く料理を口に運ぶハリーに一つの疑問を投げかける

「なんでそんなにアクセサリーが好きなの?」

「いや、こういう細工が好きなんだ。まぁアクセサリーも最近作るようになって興味がわいた」

「作る!?あんたが!?」

「おー」



聞けばハリーは彫刻家志望で、アストルニ学園にも一芸入試で入ったそうだ

普段は石に彫刻を彫っているが最近学生からの注文でアクセサリーも作り出したらしい

そのほとんどがプレゼント用だとか



「えらく注文が増えたと思ったら交流会のせいだったんだな。でもアクセサリーは新しいジャンルでおもしれぇ。いいきっかけだった」

「あんた、そんな本格的になのになんでアストルニに入ったの?」

「アストルニは芸術面での設備がいいんだ。それにアストルニ出身の有名な彫刻家もけっこういるんだぜ。その資料とかも残ってて勉強になる」

「そうなんだ・・・」

「作品を発表する機会もよくもらえるしな。将来は自分の手で作ったもんで食ってきたいからそういう場が多いのが助かる」



じっと前を見て話すハリーはブローチを見ていた時とはまた違っていて、少し大人びて見える
自分の夢が明確で、それに向かって進むハリーがアサヒには眩しく映った


「お前はなんでイスカルナにはいったんだ?」

ふいに向けられた視線と質問にドキリとする




「あたしは・・・母さんの希望で・・・」



元はといえばアサヒの母が「アサヒが少しでも女の子らしくなるように・・・」とイスカルナを進めたのがきっかけで、ハリーのように目的があって入学したわけではなかった

それがなんだか恥ずかしくて、でも嘘はつけなくて

ぽつりぽつりと話すアサヒにハリーは最後まで言葉を挟むことはなかった




「いいんじゃねーの?」




話終わった後、何を言われるのかと柄にもなくおどおどしていたアサヒはそろりと顔を上げる
返ってきたのは思いの外軽い言葉だった




「これから三年通うんだろ?そん中で何か見つけろよ。イスカルナは窮屈だろうけどそこでしか出来ないこともあんだろ」


俺はたまたまやりたいことが見つかんのが早かっただけだからな~、とハリーは食事を再開した


「それにお前さ、クラウディアと話してる時とかすげぇ楽しそうだったぞ。イスカルナでないと会えなかったんだろ?ラッキーじゃん」



口の中のものをごくりと飲み込み、得意げな顔を見せるハリーに強張っていたアサヒの体から力が抜けていく



イスカルナでしかできない事、イスカルナでしか会えなかった人


それだけでもここに来た意味があるのだと


ふわりと気持ちが軽くなる




その後、二人は何気ない話を続けた


主に学校の事や友人の事で、それぞれの学校の様子の違いに驚くことが多かった




しかし、その中でも苦手なものは二人とも共通だったようで・・・



「礼儀作法はほんとに難しい。交流会に向けて習ったけど昨日も今日もろくに使えてないわ」

「あ~俺も『紳士らしく』とか向いてねぇな。」

「あんた無理そうだもんね」

「おい」

「なによ」



軽く睨み合った後、ハリーは何かを考えるように視線を上にやり




「おし、練習するか」



そう言うなりベンチから立ちあがりアサヒの前に回りこむ

そして徐に片膝をつき右手を自分の左胸にそえると真剣な眼差しをアサヒに向けた



「レディー・ヨシムラ。昨日は大変失礼いたしました」


突然のことに驚いて目を見開くアサヒを気にすることなく、ハリーは言葉を続ける


「あなたの髪飾りはとても美しく、あなたを引き立たせていたため思わずあのような行動にでてしまったのです。許していただけますか?」


人が変わったようなハリーに動揺が隠せないでいると、ふと目つきが元に戻り『お前もしろよ』と促しているのがわかった

アサヒは一度目を瞑り、軽く深呼吸をする

数日前に教わった事を思い出す

イメージするのはクラウディアの物腰

そしてゆっくりと目を開けハリーに微笑み返す



「サー・ハリー・ロサレス。私のほうこそすみませんでした。殿方にあのように声をかけられるのは初めてだったもので、失礼な事をしてしまいました。許していただけますか?」

「えぇ、もちろんです。私の無礼を許してくださるなんて、レディー・ヨシムラは本当にお優しい」

「いいえ、そんな・・・」

「そうだ、もし良ければあなたにも私の作品を見ていただきたい。来月の第三日曜日にダロス美術館に作品を展示させていただけるのです。ご都合が合えばいらしていただけますか?」


慣れないやりとりにむず痒くなっていたアサヒは笑顔のままピタリと固まった

真意を探るようにハリーを見るが紳士の練習を続けているのか表情が読めない

からかわれているのか、それとも・・・



でもハリーの作品に興味があるのは確かで



「・・・はい、ぜひおじゃまさせていただきます」



いつもの自分なら断ってしまっていたかもしれない

でも今なら素直に受け止めることができる

これもイスカルナに入ったからできることだ


「お待ちしております」


ハリーは満足そうに笑うとアサヒの手をそっととり、口づけるふりをする

アストルニで習う作法の一つだ


アサヒは自分の耳まで赤くなっているのを感じながらも必死で振り払うのを我慢をする

今、自分は『お嬢様』なのだから




「それとレディー・ヨシムラ。そのドレスはとてもお似合いですが、体のラインがよくでますのであまり食べすぎると腹が・・・」



その直後

アサヒは我慢を止め、見事な蹴りをハリーにお見舞いした



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