ククリア学園 交流会一日目②

ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

交流会一日目②

 
交流会も佳境に入り、生徒たちがそれぞれ和やかにおしゃべりをしている


そんな中、アサヒは一人でベンチに座っていた


先ほどの騒ぎのせいかアストルニ学園の生徒から声をかけられることもなく、それはアサヒにとってありがたいことだった

しかし、騒ぎのせいで食事の並ぶテーブルに近寄りづらくなってしまったのだ



そうなると選択義は一つ


交流会が終わるのをじっと待つことだ




空腹を紛らわそうと先日授業で習った礼儀作法を思い出すが、今のところ実戦で全く使えていないのが自分でもよくわかり更に落ち込みそうになる



そんな事を考えているといつの間にか前方に人の気配


それが誰かを認識した途端、アサヒの表情が歪む



さっきまで一緒に説教を受けていた、その原因でもある青年だ




アサヒの中で元々最悪だった彼の印象は説教中に更に下降することになった

上級生が話している途中で、彼は突然隣に座るアサヒを凝視しだしたのだ

話の途中で真横を向いていてバレないはずもなく、説教の時間がプラスされたのは言うまでもない




そんな彼がアサヒを見下ろすように目の前に立っていた



睨みつけるアサヒを余所に青年は同じベンチに腰かけた



「ちょっと!」

「ほら、食え」



一言文句を言ってやろうと口を開いたアサヒの前に青年が差し出したのは一枚の皿

その上には数種類のベリーで飾られたタルトが乗っていた



「・・・なんなの?」

「食えよ」

「いらないわよ!」

「へぇ~いらねぇんだ。俺、今日出てた料理全部食ったけどこれが一番うまかったな~」

「・・・」

「じゃあ俺が食うかな。もうしばらくこんなうまいの食えないだろうな~」

「・・・」

「・・・」

「・・・食べる」

「おう」



アサヒは空腹に負けた

タルトに罪はない、と自分に言い訳しつつ青年から皿を受け取る



さっき大喧嘩したはずの青年がどうしてこんな事をするのか

そして何故今も自分をじっと見ているのか


刺さる視線にタルトを食べることもできず、痺れを切らしたアサヒが声を荒げようと横を向くのと同時に青年が口を開いた


「なぁ」

「・・・なによ」

「その髪飾り、見せてくれねぇ?」

「・・・は?」

「髪飾り」



急な申し出にアサヒが怪訝そうな表情をしていても青年は気にする様子もなくじっと返事を待っている

どうやら彼が見ていたのはアサヒの硝子細工の髪飾りのようだ


アサヒは軽くため息をつき、髪飾りを渡すことで彼の視線から逃れられるのなら・・・と、そっとそれを外し青年の手に乗せた



髪飾りを受け取った青年はいろんな角度から見たり、照明の光に透かして見たりと忙しそうだ

その姿は好奇心に満ち溢れた少年のようで先ほどまで憎らしく思っていた人物とは別人のように見えた


しばらくぼんやりと青年を見ていたアサヒは、はっと我に返り慌ててタルトを口に入れる

確かに味も香りも極上
他の料理を食べ損ねたけれど、これだけでも食べられて良かったとアサヒの頬が緩んだ


アサヒがタルトに舌鼓を打っている隣で青年は表情こそ変わらないが少し興奮気味に話しはじめた



「これ、かなり細かくて繊細な細工だぞ。どこで手に入れた?」

「え、わかんない。弟が用意してくれたから・・・」

「そうか・・・くそっ!どこで作られたのか知りたかった・・・」

「そんなに珍しいの?」

「あぁ!硝子中にこんな細工を入れるのはかなり難しくて・・・」



途端に前のめりになり嬉々として話し出す青年に驚きつつも彼の口から零れる硝子細工の話しはアサヒにとっても興味深いものだった


「この髪飾りと対になってるブローチもあるんだけど・・・」


髪飾りと一緒に弟が送ってくれたブローチは「二つ一緒につけるのは派手すぎるのでは・・・」と、寮に置いてきた物だ
青年があまりに熱心に話すので思わずその存在を伝えると、今度は目に見えて表情が変わる



「・・・明日つけて来ようか?」

「あぁ!頼む!」



アサヒの提案に青年は鼻歌でも歌いだしそうなほどご機嫌だ

どうやら余程飾り物が好きらしい

あれほど大喧嘩していたことも覚えていないようにも見える


そして青年は、呆気にとられているアサヒの髪にそっと触れ、そのまま大きな手には似合わない器用さで髪飾りを付け直す



そのまま何かを考えるように髪をじっと見つめ、青年はふわりと笑った


「・・・お前の髪、綺麗だな。この髪飾りがよく似合う」



柔らかな青年の表情と聞きなれないストレートな褒め言葉にアサヒの顔が一気に朱に染まる


その直後、恥ずかしさが堪えきれなかったアサヒの右ストレートが青年の腹に決まり、もう一騒ぎ起こることになった



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