ククリア学園 ファルケの賭け~start~

ククリア学園

-Astorni & Isukarna-

ファルケの賭け~start~

 
※この創作は「ファルケの賭け」を踏まえそこから続いています※



 
アストルニ学園第二寮
その寮生、ヒルベルト・シエスタは自室で椅子に腰かけ本を読んでいた

部屋の中は静まり返っていて、聞こえるのは時計の音だけ
いつもならば、作業台と化した勉強机で何かしらを作ったりよくわからない絵……本人曰く『デザイン』を描いている同居人―――ハリー・ロサレスが今日は不在のようだ
ハリーは今日、生徒会室に呼び出されているのだ
よく問題を起こすハリーと同室のヒルベルトは何度か連帯責任で生徒会室に呼ばれることがあった
しかし、今回の呼び出しはハリーのみ
ヒルベルトがちらりと時計に視線をやれば、その短針は6を過ぎたところだった
今度は何をやらかしたんだ、いよいよヤバイぞとクラスメイトにからかわれてハリーが生徒会室に向かってから三時間以上たっている

すると突然、無遠慮にドアが開けられる音がした
こんな事するのは同室の彼しかいない

ノックもせず無言で部屋に入ってくるのはいつものことで、すたすたと作業台に近づき、ハリーはどさりと椅子に座った
表情もいつもと変わらない
どうやら最悪の事態は免れたようだ

ヒルベルトはゆっくりと本に視線を戻す


「会長達はなんだって?」

「ナイン先生と会長達がコンクールに出てみないかって」

「ナイン先生も?」

「あぁ」

「でかいやつか」

「おー、昔からあるやつだ」



本から目を離さないヒルベルトに、ハリーも視線を向けることなく答える


ナイン先生―――ニコ・ナインはアストルニ学園の美術教師だ。それと同時に名の知れた画家でもある
ハールガーデン駅の壁の絵も彼が描いたもので、その前で足を止めて絵に見入る者も多い


そんなニコ・ナインとアストルニ学園の双璧、生徒会長であるモンブラン・ビーニャス、マクシム・マレットから勧められてコンクールに出る



つまり、『アストルニ学園』の名前を背負って参加するということだ





「ヒルベルト」

「なんだ」

「俺、手ぇ震えてんだけど」


ハリーは椅子の背にもたれながら自分の左手をまじまじと見つめる
その手の震えは不思議な感覚で、ハリーはそれが自分の物ではないかように感じていた



「びびってんのか」

「まさか」



何を言っているんだ、というかのようにすぐに返される返事にヒルベルトは心の中で「だろうな」と呟く





「こんな楽しい事、びびってる場合じゃねえ」





ハリーは震える手をぐっと握り、興奮を抑えられないかのように楽しそうに笑った



見なくてもそれを察知したヒルベルトは軽くため息を吐き、このハリーのやる気のせいで自分が巻き込まれない事を祈った

ハリーがこうなってしまえば寝不足、空腹で倒れかねないし、突然思いついたデザインをそこかしこに描きかねない
同室になってまだ二か月程だが、その可能性があるとわかるくらいには付き合いがある




「最低限の睡眠とはとれよ。それからメシもしっかり食え」

「……」

「あと授業もちゃんと受けろよ」

「……」

「……聞いてねぇだろ!!」

「あ、わりぃ。どの石使うか考えてた」



コンクール締切まであと一か月

自分の力を試すチャンスを与えてくれた三人に感謝を抱きながら、ハリーは案を描きだすためにペンを握った



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